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皆さんこんにちは!
JAST株式会社、更新担当の中西です。
~“すきま風の時代”~
「気密測定」と聞くと、最近の高性能住宅の話だと思われがちです。でも実は、家屋気密測定の歴史は、“暮らしの当たり前”が変わっていく歴史そのもの。寒さ・暑さ・結露・光熱費・健康・換気――それらの課題を一つずつ解きほぐす中で、「気密を測る」という仕事が必要不可欠になっていきました
今回は、家屋気密測定業がどう生まれ、どう広がり、どんな社会背景と結びついて成長してきたのかを、時代の流れに沿ってじっくり語ります✨
日本の伝統的な木造住宅は、四季の変化と湿気の多い気候に合わせて、ある意味で「風が通る」構造でした。縁側、障子、雨戸、土壁、床下の通気。夏をしのぎ、湿気を逃がす工夫が生活に馴染んでいたんです。
ただその裏側で、冬はどうだったかというと――
すきま風が入り、暖房しても熱が逃げ、部屋ごとの温度差が大きい。今ほど断熱材も性能の良いサッシも普及していない時代、寒さは“我慢するもの”として受け入れられていました️
この時代に「気密測定」という概念が根づかなかったのは当然で、そもそも“締め切って快適に暮らす”より、“風を通して暮らす”価値観が強かったからです。
ところが時代が進むにつれ、暮らし方が変わります。冷暖房が普及し、住宅の快適性への期待が高まり、エネルギーの使い方が社会課題になっていきます。住宅の断熱性能を上げる取り組みが進むと、次に問題になるのが「すきま」です。
断熱材を厚くしても、すきまが多ければ空気が出入りして熱が逃げる。さらに、壁の中に湿気を含んだ空気が入り込むと、内部結露のリスクも高まります。
つまり、断熱を真面目にやろうとすればするほど、気密が避けて通れなくなるんです。
ここで住宅業界は気づき始めます。
「気密は“感覚”ではなく、“測って確かめる”必要がある」✨
家屋気密測定でよく使われるのが、送風機で室内外に圧力差をつくり、漏れる空気量から建物のすきまを推定する方法です。いわゆる**ブロワードア(Blower Door)**の考え方ですね。
この技術は、1970年代後半にスウェーデンで“窓にファンを取り付ける”形で使われたのが初期の姿とされています。1977年にスウェーデンで用いられ、1979年には研究者の交流などを通じてアメリカでも研究が進んだ、という流れが紹介されています。
ここで大事なのは、「単に測る道具ができた」だけではなく、
建物の空気の漏れが、エネルギー損失や快適性に直結するという考え方が、研究によって強く裏付けられていったこと。測定が普及すると、施工の改善点(漏気箇所)が見える化され、品質向上が加速します✨
気密の重要性を世界的に広めた象徴的な存在が、パッシブハウスです。1980年代末から概念が形になり、1991年にはドイツ・ダルムシュタットで初期のパッシブハウスが建てられた、と紹介されています。
パッシブハウスでは、気密性能を50Pa時の漏気回数(ACH50)で0.6回以下といった厳しい基準で求め、現場での試験(圧力試験)で確認することが重視されます。
この「現場で測って合格する」という思想が、後の高性能住宅の品質管理に大きく影響しました。
日本でも高性能住宅の文脈で「海外では気密を測るのが当たり前」という話題が広がり、気密測定の価値が再認識されていきます
日本で気密を語るときに欠かせないのが、**C値(相当隙間面積)**です。これは建物全体のすきま面積を延床面積で割った指標で、「1㎡あたり何cm²のすきまがあるか」を示します。
そして1999年、いわゆる「次世代省エネルギー基準」の流れの中で、断熱性能(当時はQ値など)と並んで、気密性能の考え方が広く知られるようになっていきました。1999年の次世代省エネ基準で地域に応じたC値の目安(寒冷地で2.0、その他で5.0など)が語られていたことは、多くの解説で触れられています。
ここが大きな転換点です。
それまで“体感”で語られがちだった気密が、数値として比較され、目標として設定される世界に変わったんです✨
気密を目標に掲げても、図面だけでは本当の気密は分かりません。断熱のUA値のように計算で出せるものと違い、気密は施工品質がそのまま数値に出る。だからこそ「測る仕事」が必要になります。
現場ごとに施工精度が違う
大工さんの納まり、配線・配管の貫通部処理で差が出る
気密シート・気密テープの扱い、下地の状態で結果が変わる
施工途中で測れば、漏気箇所を補修できる(品質改善に直結)
こうして、工務店が自社で測定機を持つケースもあれば、第三者として測定を請け負う「家屋気密測定業」が成立していきました。測定が“検査”であると同時に、“品質を上げるためのフィードバック”になったからです✨
家屋気密測定業は、いきなり生まれた仕事ではありません。
すきま風が当たり前だった時代から、省エネ・断熱・結露対策が進み、海外の測定技術と思想(ブロワードア、パッシブハウス)が刺激になり、日本でもC値という指標が浸透して――ようやく“測定が価値になる”土壌が整ったんです。